Report22.06.29
【開催レポート】スポーツを「する」「みる」「ささえる」1日〜Good Morning Run初のパラスポーツ企画〜
Good Morning RunのRyoです。
6/12 にGood Morning Run初のパラスポーツ企画「八橋陸上競技場を走ろう&ブラウブリッツを応援しよう!」を開催しました。
特別支援学校の生徒•OBの参加者、ボランティア、スタッフ含め総勢70名。小学生〜大人、車椅子・歩行器・ブラウゴンまで、多様性にあふれた時間でした。
晴天にも恵まれ、Good Morning Runが目指したいものの1つってこういう景色だなと改めて感じました。
開催の様子をレポートしていきます。
イベントのきっかけとなった「運動を支えた思い出」
イベントの詳細を報告する前に、本企画のきっかけについて少し述べさせてください。
秋田県内でもパラスポーツを様々な場に取り入れようと活動が始まっています。
Good Morning Runも、車椅子も混じった場を作りたい、その思いがずっとありました。
私自身、障がい者スポーツ医というちょっとレアな資格を持つものの、昨年のパラリンピック帯同はコロナの影響で叶わず、悶々としておりました。
そんな中、ある個人的な思い出がもとになって、今回の企画に至りました。
数年前、県内の子ども病院に勤務していました。
その病院には様々な疾患のため長期入院している子どもたちがいます。
彼らは、病棟と隣接している学校を往復する生活で、気軽に外出ができません。
そこで、毎日「歩行クラブ」という時間を設けて、車椅子や歩行器のみんなと一緒に病棟の廊下をぐるぐる周っていました。(これは尊敬する大先輩が何年も前から続けていたものです)
決して広い場所ではないですが、とても楽しそうに走り回る子もいれば、なんだかんだ不満をいいながらも一緒に歩く子もいます。
言うことを聞いてくれず、いつの間にかコースを外れて行ってしまう子もいます。
一筋縄ではいかない歩行クラブでしたが、笑顔が溢れる時間でした。
私は、「声をかけて、歩行器に乗せて、一緒に病棟を回る」だけでしたが、その中で、「少しだけ足運びが良くなった」、「歩行器に頼らず数歩歩けた」など変化が見えた時はとても嬉しく思いました。
みんなで歩き、走る場を作ったこの経験が、私にとってのGood Morning Runの原点だと思っています。
私達は、Good Morning Runという「場」を作っています。
朝集まって、ただ一緒に走るだけです。それだけです。
でも、そこには、言葉に表現しきれない、喜び溢れる時間が生まれています。
走ることを苦手に感じていた男の子は、ゴールしたあと、みんなに褒められたことが嬉しくて走ることが好きになりました。
退職後から走り始めた方は、見事なくらい健康的に痩せました。
ここでの出会いがきっかけで、結婚に繋がった方々もいます。
それぞれの事象は、Good Morning Runがなくても違う形で起こったことかもしれませんし、Good Morning Runという場があったからこそ、そこから生まれるべくして生じたのかもしれません。
言葉にするのが難しいですが、このような「目的としていないけれど、生まれる良いこと」が、Good Morning Runを続けていける理由の1つなのです。
このようにGood Morning Runにつながってきたかもしれない「歩行クラブ」という存在をもとにして、パラスポーツの企画にもチャレンジしたいという思いが、今回のイベントのきっかけになりました。
2つの協力「ブラウブリッツ秋田とChian of Smiles Project」
しかし、車椅子や歩行器などで走るイベントを実際にやってみようと検討するも、なかなか公道を車椅子や歩行器で走るのは難しいため、企画は進めずにいました。
さてどうしたものかというところに、救世主が登場しました。
チームドクターの一人として一緒させていただいている、ブラウブリッツ秋田さん(https://blaublitz.jp/)に、「試合前の時間にスタジアムを使えないか」相談したところ、ご快諾いただくことができました。
さらに試合観戦チケットをプレゼントいただき、1日スポーツを満喫できるプランに発展しました。試合前のスタジアム内は、ほぼ貸切の状態です。車椅子や歩行器で安心して走ることのできる素晴らしい環境をご提供いただきました。
また、今回はChain of Smiles Projectとの共催です。
このプロジェクトは、医師、理学療法士、作業療法士の集まりで、「病院の外でも医療者ができることがあるはず」との思いから、パラスポーツを楽しむ場を作ろうと今年度スタートしました。私もそのメンバーの一人です。メンバーは、強力なコネクションから参加者やボランティアを集めたり、MCとして場を盛り上げてくれました。
では、ここから当日の様子について報告します。
今回のイベントで生まれた嬉しいエピソード
当日はまず準備体操を行い、その後、400mと1000mにわかれ、一斉にスタートしました。制限時間は約1時間です。ボランティアスタッフは、併走して声援を送り続けたり、何倍も走り続けたりしました。
当日のエピソードをいくつかご紹介します。
1 歩行器で400mを完走したYくん
Yくんとは、以前子ども病院勤務時にも一緒に歩いていました。
かなり久しぶりの再開でしたが、あまり動く機会がないとのことで体重は増加気味でした。いつもは歩行器で数10mがやっとのため、今回は行けるところまで走って、あとは車椅子でゴールを目指す予定でした。
途中200mくらいのところで、ほとんど他のみんなはゴールしていました。
本人に「続けたい気持ちがあるなら、みんなで応援するけどどうする?」と聞いたところ、「最後まで走らせてください」という返答がありました。
彼の成長を垣間見たようで、嬉しくて泣きそうになりました。
Y君が走り続けるあいだ、高校生の男の子たちは、周りを走り続けてくれました。
小学生から大人までみんなが伴走し、声援を送り続けました。
何かを成し遂げることも大切ですが、その過程において、支えられる人と支える人の繋がりが作り出す時間・空間は、パラスポーツの大切なものを表現したものだと思います。
2 お母さんと一緒に走り切ったNさん
Nさんは、周囲の環境によって、不安が強くなるとパニックになってしまうことがあります。学校の運動会ではみんなと一緒に走ることはできなかったそうです。
そんな中、広々としたスタジアムの環境を目一杯使って、お母さんと一緒に400mを完走しました。
午後にはブラウブリッツの試合も、観戦席の端の方からですが、拍手をしながら応援している姿がありました。
一般的には普通とされる行為が難しい方がいます。
普通ってなんなのか、よく分からないです。
でも周囲の環境が調整されるだけで、その人の可能性が広がることを実感させてもらいました。理解すること、そしてほんのわずかなサポートがあるだけでいいのだなと思いました。
3 多様なバックグラウンドのボランティアの方々
ボランティアにたくさんの方が集まってくれました。
サッカー少年、コロナ禍でボランティア活動が出来ずにいた高校生、いつも一緒に働いている医療スタッフ、参加者の家族など。小学生からは「初めてのことで不安もあったけど、とても面白かった、またやりたいです」、高校生からは「ぜひまた手伝わせてください」との感想をいただきました。
支えるというスポーツ参加の在り方も楽しいことです。
人によっては、自分がスポーツをするより楽しいと感じる人もいるかもしれません。
また、ブラウブリッツサポーターの皆さんからもあたたかい声援をいただきました。
街中では生まれない繋がりが自然に発生していました。
これがスポーツの力なのだと思いました。
スポーツは「する」だけじゃない。「みる」「ささえる」こともスポーツ
Good Morning Runはスポーツ庁のSport in Lifeに加盟しています。
Sport in Life
「スポーツを行うことが生活習慣の一部となる、そのような姿を目指し、一人でも多くの方がスポーツに親しむ社会を実現していく。そして健康で活力ある社会へ。それが、スポーツ庁の目指すレガシーである。」
スポーツが嫌いという方もいらっしゃると思います。
しかし、スポーツを自分で「する」以外にも「みる」「支える」もスポーツであると定義されています。
スポーツには、それぞれの関わり方があると思います。そして、スポーツに関わることで生まれるものがあります。
私自身もスポーツを「する」ことも、「みる」ことも、そして、スポーツドクターとして「ささえる」ことも、これから楽しんで続けていきたいと思います。
まとめ
スポーツを「する」「みる」「ささえる」を表現した1日になりました。
当日は みんなの笑顔が本当に輝いていました。
スポーツとの関わり方が様々あっていいのだなと改めて感じました。
これからもGood Morning Runはランニングを切り口として、
老若男女どんな方でも気軽にスポーツに関われる場を作り続けていこうと思います。
ご参加いただいた皆さん、サポートいただいた皆さん、ありがとうございました!
writer:Ryo
スポーツドクター。誰もが運動を楽しんで続けることができれば、病院にかかる人が減らないかなとGood Morning Runを企画運営しています。久しぶりに開催の秋田100キロチャレンジマラソンに向けて練習中。